まず目に入ったのは白い天井。
ゆっくりと重たい体を起こそて周りを見ると、そこは病室だった。
病院特有の消毒液のような匂いが鼻をかすめ、廊下のほうからはおばあさんか誰かが話をする声が聞こえた。
病室には、私が寝てるベッドを含めて4つ、でも、今この部屋に居るのは私だけだ。
でも、ベッド脇が生活感で溢れているのを見ると、きっと他の3も、誰か使っている人がいるんだろう。


「あ・・・・・・起きた!?」


突然聞こえた男性の声に驚きつつも、声の方向を見る。
男性というよりは、青年というべきか、髪の毛を茶色に染めた、若い人だった。
彼は笑顔を浮かべながら、私がいるベッドの脇に早足で歩いてきて、そのまま当然のように脇にあった丸イスに腰掛けた。


「あ・・えっと・・」
「うわー・・久しぶりだなあ・・・でも、よかった、うん、よかった!」
「・・?」


私は気さくに話しかけてくる青年にどう返答すればいいのかわからず、ただ混乱していた。
彼はしばらくの間、なんとかっていう人がどうしたとか、みんな心配しているだとか、こっちは大変だとか、色々な事を話していた。
その「誰か」も「こっち」も「みんな」にも、私は全く心当たりがなかった。
彼は誰かと勘違いしているのではないのか。


「・・・・・・・ってあ、悪い!まだ本調子じゃないよね・・・ダイジョブ?」
「え、あ・・・はあ」
「なんだよ、まじで具合悪いの?」


ひょい、と私の顔を心配そうに覗きこむ彼に、私は余計にバツが悪かった。 どうしよう、こういうのは言った方がいいのか。
でも、失礼というか、不躾?どうなんだろう。


「まお、先生呼んでこよっか?」
「・・・・・・・・・・・・・」


彼は心配そうだった。
でも、それ以上に、私の心をゆさぶったのは、
「まお?」





それは、私のナマエ?









(え・・・その冗談、あんまりおもしろくない、かも)
(20080517)