「なあ、お前篠田のどこがエエの?」
「・・・は、?」
「え、や、だから、なんで篠田なんかなあー思て、」
「あの、話の意図が全く掴めないんですが・・」


そこまで話して、伊織さんは「カーーッ」とか言いながら後頭部をばりばりかいていた。
フゥ、と一呼吸置いて、伊織さんはもう一度口を開く。


「だからな、お前、あれ、なんやろ?ほらー・・篠田の・・・恋人?」
「・・・・・・・・・・・・・」


部室内に、しばしの沈黙がおりた。
伊織さんは本気だ。目が本気だ。
本気で「なんで篠田?」って表情だ。
頭の中がぐるぐるして、心拍数が何故かあがっていく。
誤解だ、そう、誤解。


「ちがい、ます。ていうか、その情報は一体どこから」
「あ!え?なんや、てか、そらーな!うん、や、俺もまさか!と思ったんやけど・・」
「で、どこからそんなデマ聞いたんですか」
「おまっ、そんな怖い顔せんでも・・、あれ、あれや、とーる」
「え、達さん?」
「そ、とーる。
とーるがさっき、篠田とお前が・・・チュー、してた、って、騒いでてんな?
ま、でもデマなんやろ?とーるも人違いかなんかしたんとちゃうの?」


一気に体内の血が下りていくのがわかった。
それと同時に、前食器を割って、アスミさんが本気で怒った時のことがフラッシュバックした。





そして、最初に思ったのが、
「家を追い出されるかもしれない」
これは、まず、大問題だ。
住む場所がなくなってしまうというのは、学生の身としては非常につらい。
次が「アスミさんが私を嫌いになる」
まあ、本当はこれが一番最初にきたほうが良かったのだけど、私も現金だなあ、何て少し思ったりした。





・・・・とにかく、まだ騒いでいるかもしれない達さんを探して、アスミさんの耳に入る前に黙ってもらうしかない。





「・・達さん、どこにいるかわかりますか」
「へ、ああ、あいつなー・・多分さっきなー、食堂とこで会ってー・・・あー、多分篠田のトコやな。
なんや色々聞いてくるとかまたいらんこと言ってたしなー・・
西棟の1階の、ほら、会議室だっけが?いるんとちゃう?」





「ありがとうございま」


―ガタァアンッッ―


そこまで言って、私の言葉は突然、勢いよく開かれたドアの音にさえぎられた。
入り口に目を向ければ、さっき脳裏をかすめたあの時よりも、遥かに凶悪な雰囲気をまとった彼女がいた。





自分が想定していた中で、一番最悪な結末を向かえてしまったのかもしれない。



伊織の関西弁がおかしい・・・
もしよろしければ、ご指摘いただけると嬉しいです


2008,05,06