「アスミさーん」
『・・・・・・』
「アスミさーん??」
『・・・・・・・・・』


耳にあてた携帯電話から聞こえてくる、小さな嗚咽。
私は妙な罪悪感にかられてしまう。
特に何かしたという覚えもない。
だが、アスミさんが泣いているこの状況は、どうやら私が作ったに違いないらしい。


『・・・どうして私が怒っているか、わからないの?』


ぐす、という鼻水をすすったような音をおまけにして、アスミさんはそう呟いた。
アスミさん泣いてるんじゃないですか?と、ついうっかり言いそうになったが、私のこういう発言が彼女が怒った原因かもしれない、と一歩踏みとどまった。



「えと・・その、ゴメンナサイ・・」
『理由、わかる?』
「わ・・かんないです」
『・・・・・今日、どこにいたの?』


アスミさんの突拍子も無い質問に、少々驚く。
今日は確か、由一くんと達(とおる)さんが買い物に行くとかで、私もそれに付き合っていた。


「由一くんと、達さんと買い物行ってました」
『だから・・・それよ』
「そ、それ?」


アスミさんのドスのきいた声に、怖気づく。
だけど、私が買い物に行ったのが、アスミさんが怒るのに関係あるのか。
別にアスミさんと約束していたわけでもなく、頭の中ますます混乱してくる。


『私に黙って行ったでしょう』
「あ、はい・・そうでしたね・・・」


成る程、合点がいった。


『・・・・・』
「・・・・・」


「ヤキモチですか?」
『ブツッ ツーツー』


「可愛いヒトだなあ」


自然と口元が緩んでしまう。
今日は彼女の好物でも作ってあげよう。



2007,12,07