「・・・・・・オハヨウゴザイマース」
「おぅ」
「おはよー」
「ん」


「・・あれ?アスミさんは?」
「アスミ?あぁーお前おっそいからってどっかいったで?」


最初に挨拶を返した関西弁の男性、伊織さんはそう言うとまたパソコンに視線を戻した。
三人の男性は伊織さんを真ん中において、一つのパソコンを食い入るように見つめていた。


「え、じゃあアスミさんどこに・・」
「そんなのどうでも良いから!ちょっと来てって」


達(とおる)さんにそう呼ばれて三人が見てるパソコンを後ろから覗いてみる。


「え・・」


鼓動の音が、妙に五月蝿い。
口の中の唾が全部おりてくるような、吐く寸前のような。


画面の中の少女は、そのまま落ちていった。


「なんですか、これ・・」
「自殺」
「え」


一番寡黙だと思う、由一(ゆいち)くんが、そう一言呟いた。
視線はまだディスプレイのほうにある。
立っている私のほぼ真下にいた伊織が突然伸びをした。
動画はもう終わっていて、先ほどまで少女が映っていたところは何もなかった。


「びっくりやなー」
「・・・・・別に」
「あれ、この子って何で死んだんだっけ?」
「あのー・・」
「いじめ」
「えーっそうなんだー?」
「はあーん・・俺やったらそんなんじゃあ死ねんけどなあ・・」
「伊織ってどっちかっていうといじめる側だよねー!」
「失礼やな!」
「というか、いじめられても逆に仕返しで殺しちゃいそうー」
「はあっ!!てか由一もおまっ、何頷いてんねん!!!」


完全に置いてけぼりをくらった。
というか、この人たちはどうして自殺動画なんて観てるんだ。
それ以前にアスミさんはどこ。


「アスミさんは!!」
「うわ、お前突然耳元で叫ぶなや!!」
「・・すみませー」
「アスミちゃんだったらねー多分コンビニじゃないかなー。
お腹減ってたみたいだったし」
「そうですかー」


「あの、さっきの動画ってなんなんですか?」
「女の子がね、いじめが原因で、自殺しちゃったんだってー
で、その女の子が、自分が学校の校舎から落ちる様子を、セットしておいたカメラで撮ったの」
「それは、また面倒な・・」
「きっと、誰かに自分が死んだって言うことを知らせたかったんだよ!」
「まあ、これももうすぐ観れんようなるな」
「え?」
「この子死んだの、1時間くらい前やもん」
「その後、誰かがこの動画をアップしたみたい」
「じゃあ、今頃警察がいっぱい・・」
「だろうねー」


「これ、アップした人って誰なんでしょうね」
「さあなーその子に頼まれてたんとちゃう?」
「僕だったら絶対断るなー」
「私も」
「そらー俺もやな!」
「・・あれ、由一君は?」
「あれっ?由一くんー?」
「どこいったんやろー」
「あ、じゃあ私もアスミさん迎え行ってきます」
「俺腹減ったわー」
「じゃあラーメン屋行こうよ!この前の!」
「じゃー一旦昼飯ってことできゅーけーなー!」


私の脳内から、彼女はあっさりと消えてしまったけど。



2007,12,01