「だから嫌なのよ・・」


わざと彼女に聞こえるように、はっきりと言う。
でも、彼女があたしの独り言だと思い込めるように、なるたけ小さく。
あたしの思惑通り、彼女は一瞬、怪訝そうに私を見て、また行為を再開した。


別に、感じないわけじゃない。
でも、心からどうにかなりそう、なんてことは全くなく。
適当に感じたフリをしていれば、彼女は喜ぶのだろう。


「・・・愛してる」


彼女が言うその一言に、あたしはどうしたらいいかわからなくなる。


「うっ・・あ」
「・・・いれるよ?」
「・・・・・んっ、・・くぅ・・・・・・・っっ」


彼女があたしに入ってくる一瞬、その一瞬だけが、彼女に心を許す時間。
身体は正直で、その一瞬だけ、あたしは素直に彼女を求める事ができるのだ。


あたしが達するとほぼ同時に、彼女もイく。
後悔はしていない。
でも、胃の辺りがどうにももやもやと、苦しくなる。
幸福感も、充実感もなく、ただ罪悪感のような、一人取り残されたような感覚。


「・・・愛してる」


彼女の口癖を頭の片隅に残して、あたしは瞼を閉じた。








04 さよなら世界


20080112